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およそ30分ほどの取材が終わるなり、深い息をつく。選手が緊張から解かれる瞬間だ。ある意味、この一瞬がその日一番の本音を聞けるチャンスと言ってもいいかもしれない。安達裕樹はこうつぶやいた。

「もう1億越えたんやなぁと…」

長机に置かれた1枚の紙をしばらくの間見つめていた。視線の先にあるのは、取材のために用意しておいた公式の「選手プロフィール」。登録番号・選手名・登録年月日はもちろんのこと、出走回数・1着回数・優勝回数を始めとした通算成績などが詳細に記されたものだ。何か気になる数字があるのか尋ねた時の答えがそれだった。

彼が目を留めたのは、生涯獲得賞金額。確かに大台は突破していた。しかも、昨年に比べて今年は2倍近い稼ぎ。彼が今年見せてきた活躍が目覚ましいものだったのは言うまでもない。

その活躍があってのSG初参戦。年間獲得賞金額上位52選手により争われる競艇王チャレンジカップに選出されたことは、今年1年の成果を示すには十分過ぎる程の材料だ。一つのきっかけは5月の蒲郡・周年記念だった。

「やっぱり記念戦線は厳しいです。常連の方々はエンジンを仕上げる早さも道中のスピードも全然違う。断然早いです。でも、5月の蒲郡戦がキッカケで、いいエンジンにペラを合わせることができれば、何とかやっていけるという気持ちがやっと沸いてきた」


場数を踏み、手応えもようやく掴み始めた。そんな心境を伺わせるコメントもある。それは、競艇王チャレンジカップの出場が決まった当日に行ったインタビューでのこと。初のSG参戦に向けた目標を求めると、安達が返してきたコメントは「予選突破です」だった。

こういう時、若手が口にするのは決まって、「まずは水神祭を目指します」だ。後で「ちょっと大きすぎましたかね(苦笑)」と決まりの悪そうな表情を見せたものの「エンジンさえ出すことができれば、何とか準優まで行けると思う」と、やはり主張を変えることはなかった。

それだけ、安達の中には記念戦線で培ってきた、彼なりの「自信」があったのかもしれない。明らかに彼は、飛躍の時を迎えようとしていた。


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